概要
東京の中古マンション価格が28カ月ぶりについに下落したというニュースは、ここ数年の右肩上がりに慣れきった市場関係者にとって小さくない衝撃だった。東京カンテイが指標会社として名前を挙げられたのも、この転換点を数字で裏付ける立場にあったからだろう。値上がりが当たり前だった時期が長く続いただけに、「ついに潮目が変わったのか」という受け止め方が広がっている。中古市場の温度感が変わる中で、新築・分譲の現場がどう動くかに注目が集まるのは自然な流れだ。
詳細
面白いのは、価格下落の報が流れたのとほぼ同じタイミングで、各社が新商品や大型案件を次々に発表している点だ。三井不動産レジデンシャルは『パークホームズ湘南茅ヶ崎』の事前案内会を開始し、分譲住宅の需要を引き続き掘り起こしにかかっている。親会社である三井不動産はスケールの違う一手を見せた。ロンドンの英国図書館再開発プロジェクトの着工が報じられ、国内の価格調整などどこ吹く風とばかりに、海外での大型投資を着々と進めている姿が浮かび上がる。パナソニック ホームズも10月2日に新しい戸建住宅商品を投入し、注文住宅・分譲住宅の現場に新たな選択肢を加えた。野村不動産は『プラウドシティ国立』の竣工・引き渡しを9月24日に公表し、再開発案件の実績を積み増している。その関連会社である野村不動産ソリューションズは法人向け売買仲介拠点を移転し、CRE(企業不動産)提案の体制強化を印象づけた。三菱地所は丸の内エリアでSDGs映画祭やE&Jフェスといったイベントを連続して展開し、エリア価値の維持・向上という独自の戦い方を貫いている。一方、SUUMOとHOME'Sという二大検索プラットフォームは、価格が下がろうが上がろうが住み替えを検討する生活者の入り口であり続け、安定した存在感を保っている。やや小粒ながら、ライフデザイン・カバヤがCLTハイブリッド構法の新商品を10月1日に発売したことも見逃せない。木造・環境配慮型の住宅ニーズが広がる中、大手に負けじと独自技術をアピールする動きだ。
まとめ
中古価格の下落という「調整局面」のサインが出ても、供給サイドの動きは止まらない。むしろ各社は、市場が変わる今だからこそ新商品投入や大型プロジェクトで存在感を示そうとしているようにも見える。価格が落ち着き始めたことで買い手の様子見ムードが強まるのか、それとも新築・分譲の魅力が再び需要を呼び込むのか。この先しばらくは、数字の変化と現場の攻勢がせめぎ合う展開が続きそうだ。